第20回 山形県米沢市      〜大手メーカー・帝人を生んだ名君・上杉鷹山公より続く世界に誇る米沢織

 米沢、と耳にしてすぐ頭に浮かぶのが日本三大和牛の一つ「米沢牛」だと思われる。その米沢市は人口約8万人。『義』で知られる戦国武将・上杉謙信を藩祖にもつ名門・上杉家のお膝元である。その上杉家9代藩主・上杉鷹山により現代に伝わる事業として「米沢織」がある。

 1601年に関ケ原の戦いに敗れた上杉家が会津120万石から米沢30万石に大幅に石高を削られて窮乏した際、藩主・上杉景勝の参謀だった直江兼続が、財政再建の一環で青苧や絹を生む蚕の餌となる桑、さらには染料となる紅花などの栽培を家臣たちに奨励したのが米沢織のはじまりである。

 約170年の時を経て、米沢9代藩主に就任したあの名君と誉れ高い上杉鷹山が、破綻寸前だった藩の財政を救った。武家の婦女子に機織りを習得させ、養蚕業奨励のために京都から織物師を招いて織物産業に注力し、発展させた。紅花や藍などの植物染料で糸を染めて織る先染めの技術で米沢織が全国に知られるようになった。さらに明治時代から昭和の時代には、動力を利用した「力織機」を導入して生産設備が強化され、インドやアメリカへの輸出取引に発展した。

 明治時代、米沢には2つの工業学校が設立された。明治30年4月に米沢工業高校が開校。さらに明治43年には米沢高等工業学校(現在の山形大学工学部)が開校して地元企業との共同開発が盛んとなった。同校の教授を務めた秦逸三氏が大正4年に「東レザー分工場米沢人造絹糸製造所」で人工絹糸の製造を開始。大正6年に成功し、後に現在の帝人が創設された。人工絹糸はレーヨンとも呼ばれ、今日の化学合成繊維糸を駆使する土台を形成。現在、ハイテク繊維やマイクロファイバーなどを使う新合繊産地につながっている。

 米沢織は今日、高品質な織物で知られ、婦人服地の分野で技術開発してきたので繊維の分野では世界一と言われるイタリアのコモに匹敵する技術力を有するまでに発展している。また、袴の分野では全国シェア95%以上を占めており日本一を誇っている。

 ここで米沢織が今日まで発展してきた要因として3つ挙げておきたい。まずは米沢という豪雪地帯で屋内での作業を強いられたこと。次に古くから養蚕業が盛んだったことから、青苧や紅花などの原料が豊富にあったこと。そして、名君・鷹山公からの常に新しい商品開発に挑戦してきた気質がある。米沢は撚糸、染色、仕上げ、縫製、捺染、ニット、紡績など関連業種から原糸商、買継商、産地問屋など流通部門までを抱きかかえた繊維の総合産地として、「産地は一つなり」を合言葉にした強い結束力によって支えられていると言っても過言ではない。

 最後に鷹山は米沢織の他、鯉料理も米沢の地に根付かせた。水産資源に乏しい米沢に福島県相馬から鯉の稚魚を取り寄せ、米沢城のお堀で育てたのが始まりと言われている。現在でも米沢では、お盆やお正月、結婚式などのお祝いの席には鯉料理は欠かせないと言われるほど。米沢に行かれるときは、米沢牛のみならず鯉料理も味わってみるといいかも知れない。

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米沢藩の窮乏を救った9代藩主・上杉鷹山公像。米沢織のみならず、内陸の水産資源に乏しい米沢の地に鯉料理も現代に根付かせた。

為せば成る、の精神で米沢藩の財政を立て直した名君である。

(山形県米沢市) 上杉神社

(2009年11月撮影)


初代藩主・上杉景勝の参謀を務めた直江兼続公像。1600年の関ヶ原の戦いで家康に敗れ、大幅に領地を削られたあと、農業立国に力を入れ、米沢織の基礎を築いた。

(新潟県長岡市) 与板歴史民俗資料館

(2012年4月撮影)


 

名門・上杉家の藩祖である上杉謙信公像。
義を重んじる武将として知られ、300年続く上杉家の礎を築いた。

(山形県米沢市) 上杉神社

(2009年11月撮影)




東北の覇者として知られる伊達政宗公。仙台のイメージが強いが、生まれは米沢である。
上杉神社内に生誕の碑が建っている。

(山形県米沢市) 上杉神社

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