第19回 神奈川県小田原市   〜魚の宝庫・相模湾と箱根の伏流水に恵まれた200年の小田原かまぼこ

神奈川県西部に位置する小田原市。人口は約18万人。天下人・徳川家康が江戸に入るまで、関東一円を支配していた後北条氏が首都に定めた500年の歴史を持つ城下町である。多くの種類の魚が取れ、箱根の伏流水に恵まれて約200年前の江戸時代後期から作られているものがある。かまぼこである。小田原を代表する名産品と言っても過言ではない。かまぼこ通りが駅前にある。

 小田原かまぼこの始まりは、今から約200年前の大久保氏が小田原藩主を務めていた時代に魚の保存利用として生まれた。相模湾で漁獲される魚の評判を聞いて日本橋から移り住んできた職人が、相模湾で獲れるオオギスを原料に板かまぼこを完成。小田原は東海道五十三次の中でも特に賑わう宿場町で参勤交代などの人の往来が多く、板にすり身を扇形に盛り付けた形の小田原かまぼこが全国に広まった。

 明治時代から大正時代にかけて、相模湾で獲れるオオギスやクロムツ、イサキなどを主原料として発展。昭和時代に入ると生産量が増大し、地元の魚だけでは賄いきれなくなった。そこで、下関や長崎などの遠方から運んだ「グチ」という魚を使うことになる。「グチ」は独特な弾力があり、小田原かまぼこの特徴でもある「あし」と呼ばれる弾力を生み出した。戦後、技術の進歩によって冷凍すり身に変わっていき、小田原かまぼこも「グチ」の冷凍すり身を使うようになり「グチ」の使用量が全国一となった。

 かまぼこの製造工程には「魚の身を取る」「水にさらす(洗う)」「身をする」という3つの工程があり、かまぼこづくりには水が欠かせない。小田原の水は軟水の中でも少し硬度が高く、ミネラル分が多い。これがかまぼこづくりに適している。水が変わると「さらしがきかない」という事が起こる。小田原の水はミネラル分が豊富な地下水だからこそ、余分な脂分と臭みを落とし、上品な魚の旨味だけを残したかまぼこづくりができる。鉄分やカルシウムなどミネラル分が豊富な箱根の豊かな伏流水が重要な役目を果たしている。まさに豊富な魚が獲れる相模湾と箱根の伏流水に恵まれた環境の恩恵は大きい。

 小田原から箱根登山鉄道に乗り2つ目の「風祭」駅で降りると、改札を出た目の前に「かまぼこの里」がある。これは1865年創業の老舗かまぼこ企業・鈴廣の本社工場。かまぼこを中心に地元の食産物も販売しており、多くの来場者で賑わっている。中の一角には「かまぼこ博物館」がある。毎年11月15日は「かまぼこの日」とされている。

 最後に小田原はかまぼこのみならず、みかんも知られている。温暖な気候と水はけの良い土壌が適しており、石垣山から下る坂道には多くのみかんが転げ落ちている。その他にも、小田原提燈、漆器なども有名であり、小田原漆器は経済産業省の伝統的工芸品に指定されている。

 提供:伝統産業ドットコム(一般社団法人 全国伝統産業承継支援)

     こちらのサイトもご覧ください。

    伝統産業の事業引き継ぎは『伝統産業ドットコム』

事業承継の講演会・セミナーを全国各地で開催しています。

            過去の開催実績はこちらをご覧ください。

    LINE公式アカウント『伝統産業ドットコム』を開設しています。

      LINEID  @529oldri

       友達登録はこちらから  ⇒  https://lin.ee/0qChVy5


JR小田原駅前に建つ北条早雲公像。
5代100年存続した後北条家の創始者である。領民たちを慈しみ、善良政策で多くの民から慕われ、繁栄の礎を築いた。

(神奈川県小田原市)JR小田原駅前

(2010年1月撮影)




後北条家の拠点だった小田原城。武田信玄や上杉謙信が大軍で包囲しても落城しなかった難攻不落の城だった。

(神奈川県小田原市) 小田原城

(2010年1月撮影)






1590年に天下人・豊臣秀吉が小田原攻めの際、小田原城の対面にある山頂に築いた石垣山一夜城。突然現れた石垣の城に仰天した後北条氏は降参し、小田原城を開城。ここに5代100年続いた後北条家は滅亡した。

(神奈川県小田原市)石垣山一夜城歴史公園

(2010年1月撮影)




石垣山の山頂から見下ろす小田原市街。
9キロに及ぶ惣構(そうがまえ)で囲んだ城下町と魚の宝庫とも言われる相模湾が見える。

(神奈川県小田原市)

(2010年1月撮影)





コメント

このブログの人気の投稿

第26回 大阪府大阪市   〜明治時代から隆盛を極めた大阪ガラス産業の灯を守り続ける「天満切子」

第36回 宮城県仙台市   〜グルメ武将・独眼竜伊達政宗公が現代に残した400年の歴史ある仙台味噌

第33回 愛知県岡崎市   〜75歳まで生きた徳川家康を天下人に導いた長寿の秘訣・岡崎の八丁味噌