第40回 山口県柳井市   〜毛利を残した岩国領吉川家の殿様に絶賛された200年続いている甘露醤油

 山口県柳井市。山口県南東部に位置する人口約3万人の街である。江戸時代、瀬戸内海に面した地の利を活かして、廻船(貨客輸送船)の寄港地として発展した商業都市である。山陽本線・柳井駅の北側には白壁で覆われた建物が立ち並び、「岩国吉川領の御納戸」と称された往年の面影が残っている。その吉川家の殿様が絶賛し、現代にわたり200年以上続いている伝統産業がある。『甘露醤油』である。

 『甘露醤油』は、正式には「再仕込み醤油」と言われるもので、柳井市が発祥と言われている。既に出来上がった濃口醤油に、もう一度麹(こうじ)を加えて発酵させる醸造方法で作られている。手間も材料も通常の醤油の約2倍必要とし、2年以上にわたりじっくりと熟成して他が及ばない独特の深みのある味わいや香り、色合いとも濃厚な仕上がりとなっている。特に刺し身や冷奴を食するときに使用すると堪能することができる。柳井市を中心とした西日本では『甘露醬油』と呼ばれているが、江戸時代に吉川家の殿様に絶賛され『甘露醬油』という名を賜ったと言われている。

 柳井市の『甘露醬油』の始まりは、1780年代に高田伝兵衛が作り上げた醤油を時の吉川家七代当主・吉川経倫が、醤油の美味しさに思わず「甘露!甘露!」と感嘆の声を上げたという逸話が残されている。以後、現在において柳井市内には2つの蔵元が『甘露醬油』を作り続け、全国各地に出荷をしている。

 柳井市には『甘露醬油』の他に、山口県の二大郷土民芸品の一つとして「金魚ちょうちん」がある。150年ほど前に、青森県弘前市の「金魚ねぷた」をヒントにしたもので、赤と白のすっきりとした胴体にパッチリと黒い目を開いたおどけた顔が特徴だ。竹ひごと和紙、赤と黒の染料で色付けして作られたもので、お土産として人気がある。この金魚ちょうちんが飾られた白壁の街並みは200メートル続いており観光客の人気スポットでもある。毎年8月13日は「金魚ちょうちん祭り」が開かれ、白壁の街並みを中心として4000個もの金魚ちょうちんが飾られ、夏の風物詩ともなっている。

 最後に江戸時代を通じて柳井市を統治した岩国領・吉川家について。吉川家は毛利家一族であり、1600年(慶長5年)に行われた天下分け目の関ヶ原の戦いで、西軍総大将に祭り上げられた毛利輝元公の従兄弟だった吉川広家公が、裏で東軍・徳川家康に内通して毛利の名を残した経緯がある。しかし、毛利という名は残ったものの、それまで中国地方120万石を有した領地を現在の山口県だけに大幅に削られた。これを原因として吉川家は毛利宗家から冷遇されて岩国藩ではなく、岩国領という扱いにされたという。岩国藩として認めらたれたのは皮肉にも明治時代に入ってからと言われている。ただ、吉川広家公が関ケ原の戦いの際、裏で動かなければ、おそらく毛利家は家康公につぶされていたことは想像に難くない。

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柳井駅北の市内中心部には200メートル続いている白壁の街並みがあり、軒先に金魚ちょうちんが飾られている。夏の期間、夜は電飾が灯っている。

(山口県柳井市) 白壁通り

(2011年9月撮影) 柳井市柳井古市




市街地の一角にある古市・金屋地区一帯は江戸時代の土蔵造りの建物が当時のまま、数多く現存している。漆喰が映える街並みになっている。

(山口県柳井市) 白壁通り

(2011年9月撮影) 柳井市柳井古市


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