第36回 宮城県仙台市   〜グルメ武将・独眼竜伊達政宗公が現代に残した400年の歴史ある仙台味噌

 宮城県仙台市。人口約106万人を擁する東北地方最大の都市で、言わずと知れた牛タンで有名な街である。仙台の街の基礎を作ったのは、あの独眼竜で知られた伊達政宗公だが、グルメ好きでも知られた戦国武将でもある。その名残りで以後400年にわたり現代に残されている伝統産業がある。仙台味噌だ。

 仙台味噌は、政宗公が1601年(慶長6年)に仙台城を築城した際、その城下に「御塩噌蔵」(おえんそぐら)を設置したことに始まる。この「御塩噌蔵」は日本で最初の味噌工場とも言われた大規模な味噌の醸造設備である。仙台味噌は米を使い、大豆の比率が他の地域産に比べて高いのが特徴で、発酵熟成することによって、味は濃厚で深い旨味、辛口の赤味噌となり、出汁いらずで味噌汁ができると評判な味噌である。

 この仙台味噌は江戸時代に繁盛している。政宗公の後継者・二代藩主である忠宗公の頃から、江戸・大井にあった仙台藩下屋敷においても「御塩噌蔵」を設け、本格的に味噌づくりを行っている。ここで作られた赤味噌は江戸で評判となり、「仙台味噌」の名が知られるところとなった。そのためか、大井の下屋敷は「味噌屋敷」とも言われたようである。その後、仙台味噌は明治時代に入っても東京の街で積極的に売られ、一世を風靡した。

 仙台味噌は、第二次大戦中には配給味噌の基準製法となったこともあり、関東から東北地方にかけて圧倒的なシェアを有するまでになった。だが戦後において、長野で誕生した信州味噌の製造法が関東地方で普及したことによって、徐々に衰退していった。しかし現代でも仙台味噌は、赤味噌を代表するブランドの一つで、その名が全国に知られている。地元・仙台市内では現在でも6社の企業が伝統ある仙台味噌づくりを続けている。

 味噌には米味噌・麦味噌・豆味噌という3つの種類があり、かつ、赤味噌や白味噌という色による分類がある。政宗公が現代に残した仙台味噌は米味噌で長期熟成の赤味噌、辛口にあたる。京都の白味噌が5~7%、信州味噌が10~12%に対して仙台味噌は、11~13%という塩分量と言われ、辛口と言われる所以である。

 仙台の街の基礎を築いた政宗公であるが、戦いのみならず、茶道や能などにも勤しんだ教養人でもあった。また、同時にグルメ好きでもある。その影響から仙台味噌が生まれたと言っても過言ではない。政宗公は味噌だけでなく、製塩業や米づくりにも注力し、仙台の地は米どころとしても知られるようになった。武力で東北ナンバーワンの戦国武将に上り詰めただけではなく、経済政策にも優れた手腕を発揮した名君とも言える。

 奇しくも、2011年3月の東日本大震災の400年前にあたる1611年(慶長16年)12月にも仙台の街は大地震に襲われ、約5000人を超える人々が犠牲になったという。その後、1613年(慶長18年)に家臣・支倉常長を徳川幕府の許可を得て、石巻港からサン・ファン・バウティスタ号の船で欧州に向かわせた。(慶長遣欧使節)その目的は政宗公がスペインをはじめとする欧州との貿易を通じて震災復興を実現したいという想いからであった。しかし、徳川幕府のキリシタン禁教令がなされ、残念ながらその目的は実現できなかった。

 最後に当初、仙台は「千代」という地名であったが、政宗公が仙台城への移転の際に永遠に続くようにと「仙台」に地名を改めた。政宗公は仙台という地名の名付け親である。

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仙台城跡に建つ伊達政宗公像。仙台城への移転の際、地名を千代から仙台に改めた。

 (宮城県仙台市) 仙台城跡

 (2009年11月撮影)

        




仙台城の下に位置する仙台市博物館の前に建つ伊達政宗公の胸像。

(宮城県仙台市) 仙台市博物館前

(2009年11月撮影)






仙台城跡の入り口に建つ支倉常長像。伊達政宗公からの命で欧州に向かった。震災復興のために欧州と貿易を行うための交渉に臨んだが、徳川幕府のキリシタン禁令で実現できなかった。1620年に帰国後、2年後死去。

 (宮城県仙台市) 仙台城跡

 (2019年6月撮影)





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