第6回 鹿児島県南九州市 〜平和を祈る街が生んだ全国市町村別でお茶生産量日本一の「知覧茶」
今年3月、農林水産省から2020年の都道府県別におけるお茶の産出額の統計データが発表され、50年以上にわたりトップとして君臨していた静岡県を鹿児島県が抜き、首位になった。鹿児島県のお茶は「知覧茶」が高級茶として知られている。その「知覧茶」は約350年の歴史があると言われているが、2007年12月に当時の知覧町、川辺町、頴娃町の3町が合併して南九州市となり、別ブランドだった川辺茶、頴娃茶が2017年に統一され「知覧茶」となった。その南九州市は「知覧茶」の生産額が約134億円で、全国市町村別のお茶の生産量では日本一である。
今回、鹿児島県のお茶が静岡県のお茶を生産量で逆転した大きな要因は土地にある。鹿児島県の場合、平面で広大な土地に茶畑はあり、大型機械を導入して生産しているが、静岡県の場合は山間部の斜面にほとんどの茶畑があり、大型機械が使えないというのが逆転を許した理由だと言われている。
また、知覧茶は味も絶品で、これまで農林水産大臣賞や全国茶品評会においても様々な賞を受賞するなど、高品質として知られ高級茶として扱われている。その知覧茶が栽培されている南九州市は、温暖で寒暖の差が激しく霧が深い気候と、桜島の火山灰による水はけがよい土壌がお茶の栽培に適しているという恵まれた環境も大きなアドバンテージになっている
しかし課題もある。お茶の栽培を担う農家が減少傾向にあるということ。ここ15年で約6割の農家が廃業しているというデータが農林水産省にある。これは高齢化や後継者不足が大きな要因であるが、これは知覧茶に限らず全国・全業種における共通の課題でもある。
最後に、南九州市知覧町は、太平洋戦争時に旧陸軍の特攻基地が置かれた場所として知られており、観光名所として「知覧特攻平和会館」がある。ここでは南九州市の職員の方による特攻隊員の方が残した遺書の朗読が聞ける。明日は人間魚雷として敵艦に突っ込んで体当たりする役割を担うことで死を覚悟し、ご両親に書き残した遺言を耳にするのだが、さすがに自然と目頭が熱くなる。命の尊さと平和のありがたみが感じられる場所である。南九州市に行かれた際には、ぜひとも、足を運んでいただきたいと思う。
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